【食と防災の現在地 トークレポート】地域に「かかりつけの農家さん」を。コミュニティに入るコツは「同じ釜の飯を食う」

※こちらの記事は、3月15日発売の 雑誌「とおまわり 2」にも掲載されています。誌面もあわせてお楽しみください。

能登半島地震の発生から間もない2024年3月、石川県珠洲市にある飯田高校で、ボランティアによる給食づくりが行われました。その中心にいたのが、旅する料理人・三上奈緒さんです。非常時こそ「いつもどおり」の食事を心がけ、全国の生産者仲間から食材を募り、およそ170人分の給食を10日間にわたってつくりました。

その様子に密着した短編ドキュメンタリー「NOTO, NOT ALONE」(監督・小川紗良)の上映会が、2025年1月、東京都三鷹市で行われました。上映後のトークショーでは、三鷹市で代々続く「鴨志田農園」の園主・鴨志田純さんもお招きし、身近な地域でできる防災について考えました。

トークショー「食と防災の現在地」
ゲスト:三上奈緒・鴨志田純 聞き手:小川紗良


2024
3月、能登の高校で給食づくりを実施

小川:
まずは2024年3月に、被災地の高校で給食をつくることになった経緯を聞かせてください。

三上:
飯田高校の先生から、「午後の授業も再開したいんだけど、生徒がお昼ご飯を持って来れない」と相談されて。地震のあと、避難所で生活していると、料理ができず買い物も不自由で、生徒がお弁当を持ってこれなかったんですね。それで先生から「炊き出しをお願いできませんか?」という話がありました。

小川:
奈緒さんは、インスタグラムで発信して、知り合いの農家さんから食材を集めていました。ボランティアの人たちもDMでやりとりし、遠方から来る方や、「はじめまして」の方もいましたよね。

三上:
道具もほとんど、貸していただいたものです。ボランティアも、自分がもともと小学校の栄養士をしていたので、衛生のことなどを伝えながら手伝っていただきました。



小川:
鴨志田さんは、東日本大震災のときに現地へ行かれたんですか?

鴨志田:
はい、東日本大震災が起きた2週間後から、宮城県で2カ月間、ボランティア活動をしていました。まさに、「どこで炊き出しをするか」というのをまとめていく段階でした。

小川:
やることは、東北も能登も、無限にありましたよね。

鴨志田:
そうですね。やれることはいっぱいあるので、やっぱりどれだけ人が入っていけるか、ということが大事です。

都市の農地は、災害時には緊急避難所になる

小川:
鴨志田さんは農園を営まれていますが、その視点で、防災について思うことはありますか?

鴨志田:
基本的に、東京都内の農地は「生産緑地」に指定されていて、緊急時にもさまざまな用途で利用できるようになっているんです。テントで一時的に避難できたり、食料があったり。そういった面で、農地を都市の防災機能のひとつとして、見てもらうといいんじゃないかなと思っています。

小川:
すごい有益情報です。特にここ三鷹は、畑が多いですよね。

鴨志田:
そうですね。こんなに都市のなかに農地が残っているのは珍しい。都市にありながらも農地が近い三鷹は、防災に関しても、いろんなやりようがあると思っています。


地域の農園とつながる「かかりつけの農家さん」

小川:
ちなみに鴨志田さんも私も、三鷹が地元なんです。農園は、どれくらい続いてるんですか?

鴨志田:
鴨志田農園は、私で6代目、就農して11年になります。都市のなかに、農業の多面的機能性を持たせること。それによって自然と防災意識を持ってもらうのは、すごく大事かなと思っています。「かかりつけの農家さん」といった感じで、ぜひ地域の農園とつながりを持ってほしいです。

小川:
かかりつけの農家さん!

鴨志田:
かかりつけのお医者さんだけでなく、農家さんもいると、「食」へのアクセスができます。何かあったときに、頼る・頼られる関係性ができていれば、いいのかなと。やはり日頃から関係性ができていない方に頼るのは、難しいと思うんですね。うちも会員制の野菜販売をしているんですけど、各家庭にコンポストを設置してもらって、堆肥ができたら、農園へ持ってきてもらう仕組みです。それを緊急時にコンポストトイレとして使うこともできます。他の農園でも、井戸水が出るところもあるので、有事のときに何かと役立つんですよね。

小川:
すごい。畑には災害時に役立つことが集約されてるんですね。


暮らしの軸がある、能登の人々の生きる力

小川:
そういう意味で、能登の人たちは、土とのつながりが強かったですよね。

三上:
そうですね。能登では、漁師さんたちが魚や海藻をとってくる習慣もある。そこにある恵みをいただく、ある種、縄文時代のような。貨幣経済とは違う世界を感じます。そういう方たちと出会って、私は能登にハマりました。暮らしのポテンシャルが高くて、それを見たい、知りたいという気持ちがあります。

小川:
地震で孤立した地域でも、そういうたくましさを感じました。

三上:
そう、地域によっては道路が寸断されて孤立して、大変でした。でも、能登の人たちは生き延びる力があるんですよね。珠洲市・馬緤町の自主避難所にいらっしゃった方に、何を食べていたか尋ねると、サザエ丼に、海藻の味噌汁など。サザエや海藻は自分たちで捕獲したものです。もちろん避難所にもよりますが、そういう話を聞いてびっくりしたわけです。

炊き出しや支援物資も大事だけど、それ以前に自分たちの暮らしの軸がしっかりとある。自分の手で食べ物を手に入れることができて、水を引いてくることができる。その力は、本当に、生きるために必要なんだなと感じました。




コミュニティに入るコツは「同じ釜の飯を食う」

小川:
地域コミュニティの大切さを能登で感じましたが、三鷹はどうですか?

鴨志田:
三鷹も強いですよね。何かやりたいと思ったときに、つながることができていると思います。一歩コミュニティに入っていけば、一気に広まっていくのかなと。

小川:
都会は関係性が希薄と言われるけど、希望は残っている感じもしますね。たとえば、ひとり暮らしをしている人が、新たなコミュニティに入るのはハードルがあると思うんですけど、どうしたらいいと思いますか?

三上:
やっぱりご飯ですね。「同じ釡の飯を食う」って、昔からいわれてるだけあります。
「仲間とともに」という大前提を、私たちはテクノロジーや便利なものによって、手放しすぎてしまった。災害時や、困ったときに助け合えるのって、まずは隣人なんですね。だからこそ、みんなでご飯を食べる機会をたくさん作れたら、入りやすいんじゃないかなと。

鴨志田:
「みんなで美味しいご飯を作りませんか」という形で集まって、できればそれをアウトドアでやると、必然的に防災にもつながっていく。楽しいことの延長線上で、いかに備えるかというのが大事です。

小川:
鴨志田農園でも、いろいろイベントとかお料理教室とか開催されてますね。

鴨志田:
そうですね。日々のことを丁寧にやるのが、生活の質を向上させると思うので。たとえば、本当に料理の時短をしたいんだったら、美味しい食材を使えばいい。そもそも味がついているから、味付けする必要がなくなってくるんですよ。だから「添加」じゃなくて、「純化」をしていけば、必然的に余暇の時間がとれる。やっぱり、現代社会って時間がないので、1日3食をそういった形で短縮できれば、それはそれで豊かな状態だと思います。


震災から1年、いま必要なことは?

小川:
今、能登ではどういうことが必要だと思いますか?

三上:
「もう能登、大丈夫になったのかな」って思う人も増えてきているんですけど、実際はまだまだなんですよね。失ってしまった仕事、家、地域など、住民たちでこれからどうしていく?という現実が突きつけられた状態です。

今、能登から人がたくさん出てしまっています。過疎高齢化が急速に進んでるんですよ。でも、本当は帰りたいっていう若者たちもいるので、能登の人たちと一緒に、外の人も伴走してサポートをしていければと思います。関心を持ち続けることが、能登の人たちにとっても嬉しいことです。

小川:
飲食店など再開しているところも多いですよね。でも、せっかくオープンして頑張っていても、お客さんが来なかったら意味がないわけで。個人的にはそろそろ観光に行ってもいいと思ってます。行ってみるっていうのが、まず大事かなと。

鴨志田さんは、今後も都市農園を営んでいくうえで、大切にしたいことはありますか?

鴨志田:
ひとつは、過程を見せることです。農業って種をまいて、そこからトマトが出てきて、その過程でいろいろな気づきがあると思うので。

なんでも既製品が多くなっているなかで、その過程を知り、自分でつくる技術が身に付くと、いろいろなものに応用できると思うんです。ひとりひとりが技術を身につけて、貨幣依存度が下がっていけば、もっといい社会になっていくと思っています。農園でも、そういった学びの機会をつくっていきたいです。

小川:
おふたりとのお話を通して、防災について新たな視点をいただき、身近な地域でできることが見えてきました。ありがとうございました。

※本イベントは、2025年1月26日に、三鷹中央学園「プレ防災フェスティバル」の一環として開催されました。

【会場】三鷹市立第四中学校
【共催】能登からつなぐバトンプロジェクト、みたか子どもの食と未来を守る会
(撮影:眞弓英和・大田哲子)



◉プロフィール


三上奈緒|旅する料理人
「顔の見える食卓づくり」をテーマに、食を通じて全国各地の風土や生産者の魅力をつないでいる。


鴨志田純|鴨志田農園 園主
三鷹市で農園の6代目として、良質な堆肥づくりにこだわり、地域に根ざした野菜栽培を行っている。


小川紗良|文筆家・映像作家・俳優
表現活動の拠点として「とおまわり」を設立。毎週日曜、J-WAVE「ACROSS THE SKY」ナビゲーターを務めている。

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